「坂の上の雲」の謎

以下の記述は、全て私の記憶に頼っています。

司馬遼太郎さんが40歳台の大部分を費やして書かれた小説「坂の上の雲」ですが、ラストは、当然、日本海海戦で終わっています
小説だけを読むと、この海戦で、東郷平八郎率いる艦隊は、T字戦法をとってロシア艦隊を殲滅できたように書かれています。勿論、司馬さんは、文章中に T字というより、α運動を行ったと記述していますが?

ところで、この小説には、巻末に付録として、下図のような両艦隊の位置図が載っており、これを見て何か疑問を感じませんか?



私は、この位置図を見たとき、 小説中にあるような、T字戦法では、断じて全くない。小説中で私が受け取った日本海海戦のイメージとはあまりにかけ離れた位置図だ!
東郷平八郎は、単に、ロシア艦隊と並行して進みながら、砲撃戦を行うため、艦隊の進行方向を変えたに過ぎない

そのような印象を強くもちました。要するに、小説の文章から受ける日本海海戦のイメージと巻末の位置図から受けるイメージがあまにも違いすぎました。

詳しく言うと図の開始時点では、連合艦隊とロシア艦隊の進行方向は、食い違っており、当然そのまま直進すれば、離れて行きます。
当然、方向転換しなければなりませんが、小説の文章中にあるようなT字戦法であれば、縦に90度方向転換ですが、ほぼ180度方向転換しています。

つまり、秋山真之考案のT字戦法など東郷平八郎は、絶対に採用していません。

単に180度方向転換し、ロシア艦隊と並進しながら 砲撃戦を行おうとしたに過ぎません。 当たり前のことですが、並進して進めば、両者からみて相手方の船体は、大きく見え、砲手の腕がよければ、命中率は互いに増加するはずです。 小説中の記述によれば、東郷平八郎は、明治天皇に「ロシア艦隊を撃滅します」と明言したようですが、素人から見れば、 撃滅のためのごく常識的な運動パーンです。 有名な敵前回頭は、単にそうせざるを得なかったのでは?恐らく、他の選択肢は、ほぼなかったといってよいのでは?

@司馬さんは、小説中で敵前で船体をさらし回頭するので、回頭中、ロシア艦隊からは連合艦隊が静止状態にみえる。 非常に危険な一種の賭であり、多くの戦史家がそう考えていると記述しておられます。

しかし、そうでしょうか?

確かに、両艦隊が、完全に同じ速度で、同じ方向に並進すれば、両者は、互いに静止しているように見えます。 しかし、敵前回頭中、連合艦隊の一つの船体は、静止状態に近いでしょうが、ロシア艦隊は、動いています。

電車の窓から 静止している外の車を見たとき、あなたには、静止している外の車が動いて見えるはずです。そして、 もしその車が、電車と同じ速度・方向で進んでいれば、あなたには、車は静止して見えます。 同じことです。


つまり、司馬さんが書いているようにロシア艦隊からは、連合艦隊の一つの船体が静止しているように見えることなどありえません。

素人考えでは、そのような速度と位置関係では、むしろ逆に照準を合わせにくかったのでは?とすら思えるのです。

もっと詳しく言いましょう。わかりやすくするために、方向を無視します。

ロシア艦隊が、15ノット、連合艦隊が、19ノットで同じ方向に運動していれば、その差は、4ノットです。
しかし、もし連合艦隊が0.00001ノット=ほぼ静止状態であれば、その差は、約15ノットです。数字だけから見れば、 絶対に照準は、合わせにくくなるはずです。敵が早く移動しているように見えます。

ロシア艦隊、連合艦隊とも同じ方向に動いている方が、両者の差は少なく、遅く動いているように見え照準が合わせやすいのです。 そして、その差が、極大値となるのが、片方がほぼ停止状態である場合です。
(以上は、あくまで同じ方向に進んでいる場合です)

司馬さんは、黛氏という砲術の権威の方が、静止状態の船体に対して短時間では照準を合わせることが当時はできなかったとの 話を紹介していますが、単純に見ても、そのとおりなのです。(ただし、司馬さんは、私が、上で書いたような内容は、全く述べておられません。)

以上から、敵前回頭が、「危険な賭」であったことなどあり得ないのではないでしょうか?

A私がどうしても解けない疑問は、

「司馬さんは、私が、上の@で書いた内容など先刻承知のはずだ。労作=「坂の上の雲」執筆のために 大量の資料と10年に近い歳月を費やし、気づかなかったことなどありえない。?だとしたら、何故、そのように書かなかったのか?」

私の極めて劣悪なと自分で思っている頭脳では、解けない「坂の上の雲」の謎です。

ちなみに、成人向けIQテストは、第2次大戦当時にアメリカにおいて、将校の不足に対処するために考え出されたはずです。
日本では、学徒出陣と呼ぶ文系大学生の大量動員で将校不足に対応しましたが、アメリカでは、IQテストで選抜し、短期育成する手法 を採用したようです。そして、私が、そのタイプのIQテスト(=伝統的なタイプ)をしてみると、概ね145〜150ぐらいのスコアです。 ですから、当時のアメリカの基準では、必ずしも、頭は悪くはないはずですが、自分では、「俺、あほやな!」といつも再三再四思います。 ですからこのページに書いていることもなにか重大な勘違いしているかもしれません。 終わり



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